19.カピタンの話 ”風を突いて間切る夜の…”

19.カピタンの話

昨今、冬の海面では化学的に計算されたセイリングジャッケットが多く見られる。色彩もカラフルで動き易く暖かい。オフショアな海面でも、拡げられた色とりどりのスピンと共に、その鮮やかなオイルスキンやセイリングジャッケットに目が和む。一昔前、いや二昔前、冬の海だけでなく街中でもコートと言えば海を感じさせる Pコートやダッフルコート、Peter stormのcaptain コートが珍しくなかった。今ではほとんど見かけない。

閑話休題。

  これらのダブルのコートには船乗りだけが知っている1つの秘密が在る。ボタンを見て欲しい。風向きに合わせてボタンを掛け替える事が出来るのだ。ワッチでdeckに立つ時、風向きに合わせてボタンを左右、どちらでも合わせることで冬の冷たい風と潮を懐に入るのを防いでいる。

   さぁ一昔前の若者よ、君のワーローブの奥に架けられっぱなしになっている海のコートを引っ張り出して、カロチン、カレー、カナデアン、タスマニア、NZの油分を含んだ音のするような(コレは私の勝手な想いかも)セーターの上に海のコートを羽織って海へ出よう。寒風の街を歩くのもいい。

“雨風を突いて  間切る夜の  その身の辛さ 二度となるまい   船乗りに”

北前舟の船乗り達の中で唄われていた労働歌。海で風雨に耐えるときこの歌が脳裏をかすめる。

Capitan 溜

03/04/2025