21.カピタンの話 785段

21. カピタンの話

この夏、私はいい歳になる。
先、先月、金比羅さんの785段の石段を登った。
途中、ベッコウ飴を並べてある階段を過ぎた辺り、右奥の御社に掲げられた今年の厄年を告げる告文に目が停まった。

さてさてと1948年生まれの私の厄は何、と探したが1948年、昭和23年の厄は、、、無い、何処にも無い、のである。
つまり、私がここまで来て目が回り転がり落ちても、暑さで気を失っていけなくなっても、それは厄では無いのだ。

まあまあ、ここまで来れて先ずはめでたい。これから先何が起きてもまあ一先ずは、めでたい。
この先は愉しんで生きなさいと、言う事です。と告げられた気がした。

このままでいいの?
一つだけ自身に私が告げよう。

1、不精に亘るなかりしか

遅いが、気を付けます、船乗りとして。

溜光男
2025/08

20.カピタンの話 北風の湯

20.カピタンの話

都志の港に着いた。
この町は江戸後期の北前船の船頭、高田屋嘉兵衛の 故郷だ。
高田屋嘉兵衛記念公園の近くに今日の風呂はあった。
なんで、こんな記念公園の中に健康ランドのような温泉が在るのかと、一瞬訝しんだ。
番台の奥に嘉兵衛の肖像が架けられていた。
嘉兵衛がこの町を飛び出し船乗りになる為に兵庫の廻船問屋に身を寄せた時
北風の湯を訪れた。北風の湯とは、兵庫の廻船問屋、北風荘右衛門が兵庫を訪れる船頭の為に開いた湯である。

船乗りは北風の 湯へ行け、湯の中にどれだけの知恵が浮いて居るかわからぬぞと、言われた。

荘右衛門を尊敬する嘉兵衛にとって現在の記念公園の中に健康ランドの様な高田屋の湯は嘉兵衛が望んだことかもしれない。

工楽松衛門とは
「菜の花の沖」

Captain 溜

02/06/2025

19.カピタンの話 ”雨風を突いて間切る夜の…”

19.カピタンの話

昨今、冬の海面では化学的に計算されたセイリングジャッケットが多く見られる。色彩もカラフルで動き易く暖かい。オフショアな海面でも、拡げられた色とりどりのスピンと共に、その鮮やかなオイルスキンやセイリングジャッケットに目が和む。一昔前、いや二昔前、冬の海だけでなく街中でもコートと言えば海を感じさせる Pコートやダッフルコート、Peter stormのcaptain コートが珍しくなかった。今ではほとんど見かけない。

閑話休題。

  これらのダブルのコートには船乗りだけが知っている1つの秘密が在る。ボタンを見て欲しい。風向きに合わせてボタンを掛け替える事が出来るのだ。ワッチでdeckに立つ時、風向きに合わせてボタンを左右、どちらでも合わせることで冬の冷たい風と潮を懐に入るのを防いでいる。

   さぁ一昔前の若者よ、君のワーローブの奥に架けられっぱなしになっている海のコートを引っ張り出して、カロチン、カレー、カナデアン、タスマニア、NZの油分を含んだ音のするような(コレは私の勝手な想いかも)セーターの上に海のコートを羽織って海へ出よう。寒風の街を歩くのもいい。

“雨風を突いて  間切る夜の  その身の辛さ 二度となるまい   船乗りに”

北前舟の船乗り達の中で唄われていた労働歌。海で風雨に耐えるときこの歌が脳裏をかすめる。

Capitan 溜

03/04/2025

18.カピタンの話 冬の微睡

散歩の途中にツイ立ち寄ってしまうStarbucks。 誰もが知ってるシンボルマーク『セイレーン』。美しい歌声で船乗り達を岩礁に誘き寄せ、舟を座礁させ難破させるという伝説の妖精。

屋号はハーマン メルビルの海洋冒険小説[白鯨]に登場する捕鯨船ピーコッドの一等航海士、ミスタースターバック君の名前が由来。主人公じゃない。

シアトルの一軒のコーヒーショップのオーナーがなぜ彼の名前を屋号に選んだのか?

主人公はイシュメール青年。アメリカの田舎から出てきて港町ナンタケットで銛打ちクイークェック(人喰い人種と噂のある南海の島からやってきた)に出会う。捕鯨船ピーコッドに共に乗り込む。自分の片足を食いちぎった白鯨“モビィディック”への復讐に燃えるエイハブ船長…。遠い昔、一気に読んだ。

でも一等航海士スターバックがコーヒー好きだと思わせる場面はなかったなあ。創業者が土地柄もあって思い入れがあったのだろう…きっと。

街角のテラスのあるスタバの椅子で最近味を知ったチャイのトールカップ🥤を飲む。

愉しみは昔読んだ一節を思い出し、想像しながらの居眠りかも。

by Captain 溜 2025/01

余談
スタバの店員にロゴと屋号の由来を知ってる?って声をかけた。優しく笑いながら「黒いエプロンをもらう時に勉強しました!」

 

 

17.Capitanの話

此処まで幾つかの岬を超えて来た。

御前崎、潮岬、室戸岬、室戸岬では写真家の添畑薫氏の依頼で、難波誠さんの大好きだったアンパンを岬についたら顕食してくれと依頼があった。

岬を躱わす大波の中でバーさんが用意したアンパンを難波さんに捧げて手を合わせた。

足摺岬、佐多岬、枕崎、開聞岳、岬には何処の岬にもモアイ🗿像のような、巨石が風の当たる方向に並んで立っている。

錦江湾の入り口に立つモアイのような巨石は太古からの岬の佇まいを彷彿とさせる。

人は短い命を如何、燃焼させるのだろうか。

此処を離れたら甑島迄後33マイル。

岬の巌を砕いて来た潮と波に乗って8.4not

今回の航海で最高速度をマーク。

やっと旅情が込み上げる。

明日は天草、不知火の海に

2024/07/10 Capitan溜